前妻との子どもや非嫡出子の相続分はどうなるのか?
離婚した前妻との間に生まれた子供や非嫡出子がいる場合、それら子供に対する遺産相続分はどのように考えれば良いのでしょうか。遺産分割協議段階になってから突然子供の存在が明らかになり、戸惑うケースも散見されます。
ここでは、前妻との子供や非嫡出子の相続分に関する注意点をお伝えします。
離婚した前妻との子供は正当な相続権を持つ
配偶者と離婚して縁が切れても、相手との間に生まれた子との親子関係が消滅することはありません。このため、婚姻中の配偶者との間に生まれた子はもちろん、離婚した相手との間に生まれた子も、法定相続人としての権利を有することが民法で認められています。従って、仮に被相続人に前妻との子が1人と後妻との子が1人いた場合、いずれの子も法定相続人として同じ相続分を得ることができます。
もし被相続人が遺言書を作成し、先妻あるいは後妻の子だけに財産を譲るとした場合でも、いずれの子にも遺留分が認められるので、子が法定相続割合の2分の1を請求してきた場合、それに応じなければなりません。
未婚の男女間に生まれた婚外子を非嫡出子と呼ぶ
以下の条件に当てはまる子は、婚姻関係にある夫と妻の間に生まれた子であるとして「嫡出子」と呼びます。
- 婚姻期間中に妊娠した子
- 婚姻関係を結んでから201日目(約7ヶ月)以降に生まれた子
- 父親と死別あるいは別離してから300日(約10ヶ月)以内に生まれた子
- 未婚の状態で生まれ、父が認知した子
- 養子縁組を行った子
女性の妊娠期間から逆算し、特定の男性との子であることが想定される状況で生まれた子は嫡出子とされますが、男女に婚姻関係がなく嫡出子の条件も満たさない場合、非嫡出子として分けられます。
相続の段階になり非嫡出子の存在が明らかになった場合、親族はひどく困惑することが想像されるため、遺産分割協議が難航しトラブル化するケースも少なくありません。そういった不要な争いを避けるためにも、遺言書により非嫡出子を含めた遺産分割方法について指定しておくことが非常に重要になってきます。
婚姻によらない非嫡出子も嫡出子と同じ法定相続人である
平成25年12月に、非嫡出子の法定相続分に関する法改正が行われ、実子である以上は嫡出子も非嫡出子も同じ相続権を有するのが正当とされました。
従来の定めでは、非嫡出子は嫡出子の半分しか相続割合を持たなかったので、仮に未婚の親のいずれかが亡くなり相続が開始し、1500万円の遺産があることがわかった場合、以下の条件で相続分が分割されていました。
未婚の男女間に1人の子が生まれ、その後婚姻による子が1人生まれた場合
被相続人の配偶者:1500万円×2分の1=750万円
被相続人の婚姻による子:1500万円×3分の1=500万円
未婚の子:1500万円×6分の1(嫡出子の2分の1)=250万円
母親は同じであるにも関わらず、婚姻状態の有無により子が不平等な扱いを受けている状態であったため、平成25年9月には最高裁がそれを違憲状態とし、同年12月の法改正では「非嫡出子の相続分は嫡出子の2分の1とする部分を改め、嫡出子も非嫡出子も等しく子としての相続分を得る権利を持つ」として変更されました。
これにより、嫡出子と非嫡出子は法的に等しい立場になり、同じ法定相続分が認められ、相続において不公平な扱いを受けた場合も以下の通り遺留分の請求をすることができます。
相続人が配偶者1人のみである場合
法定相続分×2分の1
相続人が子供だけである場合
法定相続分×2分の1×子供の人数分の1
相続人が配偶者と子1人である場合
配偶者の法定相続分×2分の1×2分の1
子の法定相続分×4分の1×子供の人数分の1
前妻との子供や非嫡出子がいる場合はトラブル回避のためにも遺言書の作成が必須
当事務所においても、分割割合を指定した遺言書作成のアドバイスを行っております。生前の故人に特別な意思がない場合、自ずと法定相続分に従って分割する前提となりますが、一般的には特別な思い入れを反映させるために遺言書を作成するものです。
ただし、相続人の立場としてはその内容が必ずしも納得のいくものではないこともあるため、弁護士としては「書く人の意思や希望を実現しつつ、親族が揉めないように配慮したアドバイスを行う」ことを特に心がけています。
遺言書の作成だけではなく内容を変更したい時も、依頼者の方には当事務所の弁護士までお気軽にお声かけ頂くようお願いしています。弁護士からも定期的に連絡を入れ、遺言書の内容はこのままで良いかお尋ねし、その時々の状況に合わせた改善点を確認していきます。
弁護士は争いの代理人になることが多いですが、実は争いを予防することも大切な仕事です。依頼者の思いをできる限り実現できるようサポートしつつ、相続人が円満な遺産分割を行えるよう配慮してお手伝いしていきます。
これから遺言書を準備しようとお考えの方は、ぜひ当事務所までお気軽にご相談下さい。