公正証書遺言書き方とメリットについて

代表弁護士 田中 克憲 (たなか かつのり)

故人が愛情や感謝を表すために特定の人物により多く遺産を与えたい時など、遺言書を作成して遺産を指定分割するよう意思表示を行います。

遺言書の残し方には公正証書遺言・自筆証書遺言・秘密証書遺言の3種類がありますが、中でも最も安心かつ確実であり、利用のメリットが高いとされる「公正証書遺言」について解説します。

法の専門家である公証人が作成する最も確実な公正証書遺言

自筆証書遺言や秘密証書遺言は、遺言者が自ら自筆で遺言書を作成するため、記載内容にミスが生じ、開封時に無効とされるケースも散見されます。

一方、法の専門家である公証人が作成する公正証書遺言であれば、法的な間違いを心配する必要がなく、完成した遺言書は公証人役場で保管されるため紛失や偽造等の心配もありません。

作成元や保管方法が非常に信頼の高いものであるため、相続の開始において検認を受ける必要もなく、3つの遺言書作成方法の中では最も安心かつ確実であるとされています。

公正証書遺言の書き方手順

まずは遺言として残したい内容を予め整理しておき、公証人にすぐ伝えられるように準備します。

続いて法定相続人が誰になるのか、戸籍謄本を取り寄せて厳密に確認しておきます。将来的に相続人予定者のいずれかが死亡した場合、調査時点での相続関係が変化しますので、配偶者や子が先に亡くなってしまった場合等、考え得るいくつかのパターンを想定しておく必要があります。

遺言書では遺産分割の指定を行いますので、自分がどのような財産をいくらほど所持しているのか、漏れなく全て書き出します。金融資産であれば銀行名や支店名、番号や名義人、不動産であれば登記簿記載の正確な住所地等、正確な情報を記載しなければなりません。

自分の持つ財産に漏れがあるか心配な場合や、正確な財産情報の記載について不安がある場合は、弁護士に相談し照会を使ってしっかりと確認するようにしましょう。

ここまでの準備ができたら、以下の書類を揃えて公証人役場に赴きます。

  • 遺言者の印鑑証明書
  • 遺言者と相続人の関係を確認できる戸籍謄本
  • 不動産を相続させる場合は登記事項証明書と固定資産税評価額証明書
  • 遺贈する場合は相手の住民票
  • 2人の証人の確保
  • 手数料

未成年者・相続人や血縁者・公証人の血縁者等は証人となることができません。

公証人役場では、2人の証人立会いのもと、遺言者が遺言内容を口述で公証人に伝えます。公証人は聞き取った内容を書き取り、間違いがないか遺言者に対して読み上げます。遺言者と証人が正確性を確認したら署名捺印を行い、公証人は法に基づいて作成された遺言書である旨を記載して署名捺印します。

公証人手数料は遺産総額により変化する

公正証書遺言の作成には費用がかかり、作成当日に公証人役場で支払いを済ませます。手数料は遺産総額により変化し、100万円以下の場合は手数料が5,000円、100万円~200万円以下の場合は7,000円、200万円~500万円以下の場合は11,000円というように目的財産の価額に応じて増額していきます。

遺言者が入院中や療養中のために公証人役場に出向くことができない時は、公証人が出張することもでき、その場合は日当と交通費を実費として支払い、加えて1.5倍の手数料を支払うこととなっています。

公正証書遺言を利用する4つのメリット

公証人に作成を依頼することで、以下4つの大きなメリットを享受することができます。

  • 法の専門家である公証人が作成するためミスや偽造の心配がない
  • 遺言書原本は公証人役場に保管され、代わりに謄本を渡されるので紛失の心配がない
  • 作成元がしっかりしているため家庭裁判所による検認を受ける必要がない
  • 何らかの理由で字が書けない遺言者や障害を持つ遺言者は、民法969条に基づき、通訳人を介する等して遺言内容を伝え、公証人が事情を付記すれば遺言書の作成が可能である

自筆証書遺言は代筆することができませんが、公正証書遺言であれば公証人が作成するため、字が書けない方でも問題なく遺言書を作成することができます。

公正証書遺言が無効とされるケース

公正証書遺言が無効とされるケースは非常に稀ですが、以下のような場合では無効と判断される恐れがありますので注意が必要です。

  • 公証人の同席なしに作成された遺言書
  • 民法第974条に基づき欠格者が証人となった場合
  • 例外を除き口述されずに作成された遺言書
  • 証人の同席なしに作成された遺言書

公正証書遺言は最も確実で安心な方法とされていますが、細かなルールに基づく作成が必要である点は他の遺言作成方法と同じです。公正証書遺言を作成する場合でも、弁護士に依頼しておけば、作成上の注意をアドバイスしてもらうことができ、必要な書類を間違いなく取得サポートしてくれますので、不安や心配を抱えることがありません。

遺言書は、今後の相続において、相続人が円満に財産分割を終えるかトラブルに発展するかという重要な問題に関わることですから、法の専門家である弁護士を味方につけておくことは非常に有効です。

当事務所としても、常に依頼者に寄り添った遺言書作成のトータルサポートを提供していますので、ぜひお気軽にご相談ください。

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