相続分・法定相続分とは?

代表弁護士 田中 克憲 (たなか かつのり)

一般的に相続人は複数人存在することが多く、故人が残した財産をどう分けるか問題が発生しやすいと言えます。当事者間の話し合いでは任意の分割が難しい場合に備えて、法律では遺産の分け方に目安を設けており、これを法定相続分と読んでいます。 ここでは、法定相続分によりどのように遺産が分けられるかをご説明し、遺言等がある場合の例外対応について整理します。

民法に規定された遺産分割割合を法定相続分と呼ぶ

故人の財産を受け継ぐ相続人が複数存在する時、相続人の位置に応じた公平な分割ができるように、民法では法定相続分としてその割合が明示されています。本来、遺産は相続人の話し合いにより任意に分割できるものですが、分割を容易にしたり問題発生の可能性を抑えたりするために、法定相続割合が役に立ちます。 なお、遺言がある場合は、故人の意思が優先されるものとして遺言に基づく相続が行われ、これを指定相続分と呼びます。

相続人の位置に応じた法定相続分の具体的割合

どの法定相続人が何人いるかにより、法定相続分は異なってきます。仮に故人の遺産が1000万円だった場合の具体的割合を考えてみます。

相続人が故人の配偶者1人のみの場合

1人しか法定相続人が存在しない場合、法定相続分は100%となります。このため、1000万円はそのまま配偶者が相続します。

相続人が故人の配偶者と2人の子である場合

配偶者が2分の1、子が残りの2分の1を分け合うため、子が2人いる場合はそれぞれ4分の1ずつ相続することになります。従って、配偶者が受け継ぐ分は1000万円×2分の1=500万円となり、2人の子が受け継ぐ分はそれぞれ1000万円×4分の1=250万円ずつとなります。

相続人が配偶者と2人の直系尊属である場合

配偶者が3分の2、2人の両親あるいは祖父母が残りの3分の1を分けます。従って、配偶者が受け継ぐ分は1000万円×3分の2=約666万円となり、2人の直系尊属はそれぞれ1000万円×6分の1=約166万円ずつとなります。

平成25年を境に嫡出子と非嫡出子の法定相続分が同じとなった

以前の民法では、第900条において「非嫡出子の法定相続分は嫡出子の2分の1」とされていましたが、同じ実子でありながら大きな差が存在することが問題視されていました。 平成25年には最高裁が「非嫡出子と嫡出子の法定相続分が異なるのは違憲」とする判決を出したことにより、以降は双方とも「子」としての法定相続分が認められるようになったのです。

遺言書がある場合は法定相続分より優先される

故人が自分の財産をどう分割して欲しいか書き残した意思が遺言書になります。遺言書は法定相続割合より優先されるので、指定相続分扱いとして遺言書に従い財産分割を行うことになります。 ただし、特定の相続人に対して極端な優遇があり極めて不公平である場合、法定相続人にも権利があるとして「遺留分」を請求することができます。

  • 相続人が配偶者だけの場合は2分の1を遺留分として請求可能
  • 相続人が子供だけの場合は2分の1×子供の人数分の1を遺留分として請求可能
  • 相続人が配偶者と子1人の場合は、配偶者は2分の1×2分の1、子は4分の1×子供の人数分の1を遺留分として請求可能

仮に相続人の遺留分を侵害するような遺言書を作成しようとしても、最終的には遺留分侵害額請求(旧:遺留分減殺請求)により被相続人の意思は実現できなくなります。どうしても特定の相続人を優遇したい場合は、当該相続人に対し生前贈与の形で財産を譲り、残る相続人に対するケアも忘れず行うことが大切です。

特別受益分や寄与分については例外的な遺産分割が認められる

特別受益分

故人が生前お世話になった相続人に対し、より多く財産を渡したいと考えるのは自然なことで、その人に現金を渡したり不動産を譲ったり、様々な形で生前贈与を行うことがあります。 しかし、それらの行為は特別受益と見なされ、他の相続人との不公平を是正する意味から、受益者の法定相続分が差し引かれることになります。 当該相続人が受益者であることの証明は細かく集めていくことになりますが、通帳の記録や財産授受に触れた手紙、家を建てたり留学したりした時の経済的支援、結婚資金の援助等が証拠となってきます。

寄与分

故人の財産形成の維持に貢献したと見なされた場合、当該相続人には寄与分が認められます。この場合、遺産から寄与分を差し引いた額が相続財産総額となり、これを相続人間で分割しますが、寄与した相続人には法定相続分に寄与分が加算されることになります。 例えば故人が介護を必要としており、誰の助けもなければ財産は減るばかりであったところを、当該相続人が介護を行ったことにより財産の形成維持に貢献したとなれば、寄与分として認められることになります。 ただし、一人で介護を行ってきた人の場合、介護に精一杯で何にも記録を取ってないことがよくあるため、寄与分の証拠収集はやや困難を伴いがちです。 当事務所では、周囲の証言や介護ヘルパーとの連絡帳、ショートステイ等の高齢者施設の記録を丁寧に確認し、証拠として活用できる記載を調査し寄与の裏付けを行っています。そこで寄与したことを明らかにできれば、十分な寄与分に合意してもらえるよう交渉することも可能となります。 受益分や寄与分を確定させるには細かな証拠や冷静な交渉が必要になります。ぜひ、早い段階から当事務所までご相談頂くことをお勧めいたします。

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