遺言内容と異なる遺産分割はできるのか?
故人が遺言を残して財産分割方法を指定している場合、相続人の間で財産トラブルが起きないようにという故人の配慮も存在しています。しかし、相続人の統一意思として、遺言に記載はないが自分たちの納得いく方法で分割したい場合、それは叶うのでしょうか。
ここでは、遺言内容と異なる遺産分割の可否について解説します。
遺言内容と異なる遺産分割を行うには全相続人の合意が必要
以下に挙げる条件に該当しない限り、財産を受ける相続人ら全員の同意に基づいて、遺言内容と異なる遺産の分割が可能です。
- 故人が遺言内容と異なる遺産分割を禁じている場合
- 遺言執行者が選任されている場合、遺言執行と矛盾しているか遺言執行者の同意が得られない場合
- 遺言に従って遺産分割を済ませていた場合
すでに遺産分割が済んでおり、再分割することにより遺産の相続分が増えた相続人は、贈与税の対象となり課税されます。
遺言内容と異なる相続方法を採りたい場合も遺産分割協議を行う
故人が遺言内容と異なる遺産分割協議を禁止しておらず、全ての相続人が遺言内容と異なる遺産分割を行うことに同意しており、遺言執行者の執行を邪魔しないか執行者の同意が得られている場合、全ての相続人が集まって遺言内容と異なる遺産分割協議を行うことが可能です。
遺言書では、誰にどの財産を譲ると指定しているケースが多く見られますが、相続人が異なる財産を希望しており、それが他の相続人と利害一致する場合、遺産分割協議で全ての相続人が合意することによって任意の分割を行うことができます。
例えば、故人が不動産は相続人Aに譲ると指定している場合、本来であれば相続人Aは遺言書に従って不動産を相続することになります。しかしAは不動産を希望しておらず、代わりに相続人Bが不動産を希望している場合、AとBはそれぞれが相続した遺産を交換する協議を行うことができます。
遺産分割協議には弁護士を介入させた方が安心
故人の意思である遺言書と異なる分割方法をとるわけですから、法的な制約や正しい手続き方法を理解して進める必要があります。スムーズに協議を進めなければ、すぐに相続放棄の期限や相続税申告の期限が訪れるため、ぜひ弁護士を介入させて間違いのない進行を行いましょう。
遺産分割協議は、本来であれば相続人同士で行われるべきものですが、その分揉め事の発生率が高いことから、必ず弁護士を介入させるべきだと言えます。弁護士は常に毅然とした態度を取り、何を言われても動揺することがありません。
当事務所の弁護士も毅然とした姿勢で丁寧に相手と話をすることで、譲歩を引き出したり、話をまとめたりすることを可能にしているのです。法的に見れば結果が想定されることであるからこそ、いかに相手を説得し合意を得るかが弁護士の重要な仕事であると言えます。
相続人の同意があっても遺言執行者の同意がない場合は遺言内容に従う必要がある
遺言通りに財産分割が行われるよう、その執行責任を持つ人物を遺言執行者と言います。遺言執行者は相続人のうちの誰か1人だったり、あるいは弁護士や行政書士だったりする場合もあります。
遺言執行人は、故人の財産目録を作成したり、財産管理や登記手続きを行ったりする等、重要な役割を担っています。
遺言執行人の本来の目的は、故人の意思である遺言を正確に執行することにあるため、他の相続人が全て同意していたとしても、遺言内容と異なる分割に反対し、遺言書に基づく遺産分割を進めることができるのです。
もし遺言執行人たる人物が、相続人の同意に追随するとした場合は、遺言内容と異なる遺産分割協議を進めることも可能です。
遺言書に遺産分割協議の禁止が明記されていたら任意の遺産分割協議はできない
故人が遺言書で、どの財産を誰に譲るか明言しており、自分が指定した以外の方法による遺産分割を禁じていた場合は、相続人の任意で遺産分割協議を行うことはできません。
従って財産を相続した後、相続人同士が別途契約を結んで財産の交換や贈与等を行う必要があります。この場合、相続税に加えて贈与税等が課税される可能性が出てきます。
このように、遺言書で指定されていない方法で遺産を分割しようとすると、法的な問題が複数絡み合うことになるため、当人のみの力でスムーズに解決していくことには困難を伴います。
特に、各相続人には思惑があるため感情的になりやすく、揉め事に発展しやすいのです。一度揉め事になってしまうと、相手の気持ちを解きほぐすところからやり直さなければいけません。
そのような事態を回避するためにも、任意の話し合いが持たれる前の段階から弁護士の力を借り、スムーズな解決を目指すべきだと言えます。
弁護士が粛々と話を進めていくことにより、他の相続人も理解や納得が深まりますし、何より法的な対処を間違いなく行うことができますので、ぜひお気軽に当事務所までご相談ください。