遺言書作成で必ず行うべきことと作成時の注意点について
「残された子供たちがトラブルなく相続できるように」
「私に尽くしてくれたことに感謝の気持ちを表したい」
遺言書を残す理由は人によって様々かと思いますが、トラブルのない相続を実現するためには、遺言書の作成は有効な手段のひとつです。また、相続に自分の意思を反映させたい場合には、遺言書の作成は必須と言えるでしょう。
しかし、遺言書は書き方を間違えると、法的に無効となってしまうという落とし穴があります。ただ無効になるだけならまだしも、それが火種となり、トラブルに発展してしまうことも多々あります。そのため、正しい知識と正しい方法で遺言書を作成することが重要です。
ここでは、遺言書を作成する上で必要な注意点について解説します。
法定相続人の該当者が誰なのか予め確認する
まずは、法定相続人が誰なのか漏れなく確認しておくことが重要です。
法定相続人とは、相続が発生した場合に相続人になる人のことです。ここをはっきりさせずに遺言書を書いてしまうと、漏れが生じる可能性があります。自分が法定相続人だったのにもかかわらず、遺言書に名前がないという場合には、高い確率でトラブルになってしまうので、誰が法定相続人になるかは必ず確認するようにしましょう。
非嫡出子も相続人となる
非嫡出子も相続人になれることが法的に認められています。
非嫡出子とは、婚姻関係にない男女の間で生まれた子供のことです。具体的には、愛人との間に生まれた子供などが該当します。
非嫡出子がいる場合には、十分な配慮を行わないと、後の相続トラブルに発展しやすくなります。さらに、家族に非嫡出子の存在を話していない場合には、ますます混乱を招きやすいです。こうした場合には、遺言書できちんと相続方法を指定しておき、トラブルは未然に防止することが大切です。
財産調査を行い遺産総額をはっきりさせる
遺言書は故人の財産を相続させるための意思表示の手段となりますから、財産内容と総額について正しく把握しておく必要があります。自分が所持している全ての財産を、普段から漏れなく管理把握していれば良いのですが、遺言書作成段階になってから財産調査を開始するケースも散見されます。
不動産を所有している場合は、登記事項に基づいた正確な情報を遺言書に記載する必要がありますので注意しましょう。また不動産は分割相続させると相続人の間で揉め事に発展するケースが多々あるため、割合よりもどの財産を誰に相続させるのか明確に指定しておくことが大切です。
財産調査は本人でさえも記憶漏れが起こりやすい事柄なので、積極的に弁護士の力を借り、照会してもらう等して不備のない遺言書を作成できるようしっかり準備を進めます。
相続人の遺留分に注意して相続割合を指定する
遺言書に関するトラブルの典型的な例が、相続人の遺留分を侵害しているケースです。ですから、遺留分には細心の注意を払いながら遺言書を作成する必要があります。
遺留分が認められているのは、配偶者・子・直系尊属です。兄弟姉妹には認められていません。
遺留分権者に配偶者または子が含まれる場合には、相続財産の1/2、遺留分権者が直系尊属しかいない場合は相続財産の1/3が遺留分となります。
ちなみに、各遺留分権者に認められた遺留分は以下の通りです。
配偶者のみの場合 | 配偶者:1/2 |
---|---|
子のみの場合 | 子:1/2 ※子が複数人いる場合は人数分で均等に分割 |
直系尊属のみの場合 | 直系尊属:1/3 ※直系尊属が複数いる場合は人数分で均等に分割 |
配偶者と子の場合 | 配偶者:1/4 子:1/4 ※子が複数人いる場合は人数分で均等に分割 |
配偶者と直系尊属の場合 | 配偶者:2/6 直系尊属:1/6 ※直系尊属が複数いる場合は人数分で均等に分割 |
従って、遺産総額が5,000万円でその全てを愛人に遺贈すると遺言で指定したとしても、法定相続人である妻子には以下の通り遺留分が認められることになります。
- 妻の遺留分:5,000万円×1/4=1,250万円
- 子(1人)の遺留分:5,000万円×1/4=1,250万円
つまり、妻と子1人がいる場合では、愛人に遺贈する財産の上限が2,500万円となり、残る2,500万円は遺留分として妻子が相続することになります。
当事務所でも、遺言書の内容が遺留分を侵害する可能性があると判断した場合は、遺留分侵害額請求(旧:遺留分減殺請求)により遺言書通りの遺産分割は実現できない旨をお伝えしています。どうしても特定人物を優遇したい場合は、生前贈与を活用するようにし、相続人の遺留分を侵害しないプランを作成するようアドバイスを行っています。弁護士にご相談いただくメリットとしては、こうした専門的な手法のアドバイスをもらえる点はひとつ大きなところかと思います。
手軽に作成できる「自筆証書遺言」は間違いのない書き方を理解しておくことが大事
ご自分で書く自筆証書遺言は、手軽に作成できるメリットはありますが、その方式は厳しく定められています。
自筆証書遺言を作成する場合は、遺言内容全文に加え日付や氏名を全て自筆で記載し、押印することとしています。また遺言内容を変更したい場合は、変更箇所に押印した上で変更の旨を付記及び署名しなければなりません。
費用もかからず自分だけで作成できるのが自筆証書遺言のメリットですが、定められたルールに則って間違いなく記載する必要がありますし、不動産相続が含まれる場合は登記簿に従って正確な住所を書き入れなければなりません。
また作成した遺言書は改ざんや紛失のリスクが付きまとい、いざ相続の開始となった時には家庭裁判所の検認を受ける必要も出てきます。自由度は高いものの、結果として手間と労力が相応にかかる場合があります。
確実な遺言書を残したければ公正証書遺言がおすすめ
もし確実な遺言書を残したいのであれば、公正証書遺言の形式を選ぶことを強くおすすめします。
公正証書遺言は、専門家の立会い・管理のもと作成する、もっとも信頼のできる遺言書の形式です。ご興味のある方はこちらに詳しく記載されていますので、ご覧ください。
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遺言の確実な実現のために「遺言執行者」を決めておくことが大事
遺言執行者とは、遺言内容を間違いなく実現するための様々な手続きを行う役割を持つ人物を指します。遺言執行者がいない場合、相続人だけで検認や遺産分割の手続き、不動産の名義書換え手続き等を行わなければならず、大変な手間が発生すると同時に相続人同士のトラブルにも繋がる可能性が出てきます。
しかし、遺言執行者がいれば、煩雑な手続きの一切を任せることができ、不要なトラブルを避けることができるので、相続がスムーズに運びやすくなります。弁護士等の専門家に予め依頼し、遺言内容が確実に粛々と実現される環境を整えておくことが大切です。
遺言書作成など生前対策をご検討の方はお気軽に当事務所までご相談ください
当事務所でも、依頼者の要望を反映させた「オーダーメイド」の遺言書作成をサポートしていますが、作成後も遺言内容の変更をお手伝いしたり、定期的に状況確認や変更意思確認を行ったりする等、ホームロイヤーとしてのフォローを大切にしています。
最も重要なのは、故人の意思をいかにトラブルなく実現するかというところにありますので、遺言書作成をお考えの方はぜひ当事務所までお気軽にご相談ください。