遺言書が見つかったら「検認」が必要

代表弁護士 田中 克憲 (たなか かつのり)

相続の開始時点で遺言書が発見された場合、速やかに家庭裁判所に遺言書を提出し、検認を受けて遺言書の内容を確認することになります。

ここでは、自筆遺言書に検認が必要な理由とその手続きについて解説します。

自筆遺言書は家庭裁判所による「検認」を受けなければならない

遺言書の検認とは、遺言書がどの形式でいつ誰がどのような内容で作成したのかを確認する手続きのことを言います。開封後の内容改ざん等を防止し、遺言形態や書式の正確さを確認する目的から、家庭裁判所で検認手続きを行います。

検認を終えた遺言書は正式なものであると認められ、故人の意思として相続人等に知らされることになりますが、遺言書に法に反した内容が記載されていた場合、その内容は無効とされます。

検認を受けずに開封したとしても遺言書の効力自体が無くなるわけではありませんが、勝手に開封し中をあらためることは証拠保全を妨害する行為になるため、罰金に当たる5万円以下の過料が科せられます。

検認では自筆証書遺言と秘密証書遺言を調査確認する

公正証書遺言は遺言者が口述した内容を公証人が書き取るため、法的な有効性が担保されていますが、自筆証書遺言と秘密証書遺言は遺言者が作成した内容を確認せずに保管されてきたため、家庭裁判所で遺言形式や書式等を確認することになります。

自筆証書遺言

遺言者が遺言内容・日付・署名を自筆で作成し押印するもので、パソコンや録音、ビデオ撮影による遺言は無効となります。遺言者が任意に保管するため、その内容の正確性について厳しく確認を受けます。

秘密証書遺言

遺言者が作成し封をした遺言書を公証役場に提出したものです。提出時には2人の証人と公証人が立ち会い、公証人が所定の記載事項を書き入れ署名捺印し、公証人役場に保管されます。保管状態には問題ないものの、ルールに則った書式で作成されているか、内容が法に反したものではないか等について家庭裁判所が確認を行います。

家庭裁判所における検認手続きの申し立てから検認完了まで

遺言書を発見した者は速やかに家庭裁判所に検認の申し立てを行わなければなりません。

検認の申立て

遺言書検認申立書を始めとする各種必要書類を提出し、家庭裁判所に対して検認の申し立てを行います。申立人は遺言書を保管していた人物か遺言書の発見者である相続人で、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。

検認期日

申し立てを行ってしばらくすると、家庭裁判所から検認の期日について連絡が入るか、検認期日通知書が送付されます。検認当日は、遺言書を作成した書式の確認をはじめ、作成に使用した筆記具に至るまで厳密に調査が行われ、調書が作成されます。

検認済証明書を貼付した遺言書の返却

全ての検認作業が終了すると、裁判所の書記官が作成した検認済証明書が遺言書に貼付され、相続人のもとに返却されます。検認済み証明書には、当該遺言書が作成された日付を証明する旨が記載されています。

検認の申し立てに必要な各種書類

家庭裁判所に申し立てを行う際、以下の書類を提出する必要があります。

  • 所定の家事審判申立書
  • 当事者目録
  • 遺言者の出生から死亡に至るまでの全戸籍謄本(除籍、改製原戸籍を含む)
  • 全相続人の戸籍謄本

相続人である遺言者の子及び代襲者がすでに亡くなっている場合は、孫及び代襲者の出生から死亡に至るまでの全戸籍謄本(除籍、改製原戸籍を含む)を提出します。

相続人である遺言者の父母のうちすでに亡くなっている人物がいる場合は、その人物の死亡が記載された戸籍謄本(除籍、改製原戸籍を含む)を提出します。

この他、相続人の順位に従って、該当する人物に関わる戸籍謄本を用意し提出することになります。なお、検認申し立てには、遺言書1通あたり800円の収入印紙と数百円程度の郵便切手が必要になります。

検認申し立てのための準備から遺産分割協議まで弁護士に依頼するとスムーズになる

大切な家族を失った悲しみや葬儀の前後で忙殺されている中、さらに検認申立書を作成したり必要な戸籍謄本を全て揃えたりする作業は決して簡単ではありません。

しかし、相続問題に経験の深い弁護士に依頼すれば、相続開始直後で家族が慌ただしくなっていたとしても、必要な書類を間違いなく揃えて検認申し立てを行うことができます。

他の士業にはできない検認作業への同席も弁護士であれば可能ですし、裁判所との期日調整等も任せることができます。何より、最も重要な検認終了後の遺産分割協議までサポートしてもらえるので、話し合いがスムーズに進行しやすくなります。

相続人の関係がおもわしくないケースや検認申し立てを自力で行うには不安なケース、検認を終えた遺言書の内容に不満が生じる可能性がある等、相続人だけではトラブルに発展しそうな場合であっても弁護士が介入していれば迅速かつ穏便な問題解決を図ることができます。

当事務所としても、できるだけ早くご相談いただければその分対策を講じる余裕も生まれ、結果として依頼人及び相続人の方々が抱える負担の軽減に貢献できると考えています。

もしも遺言書を発見されましたら、当事務所まで速やかにご相談いただくことを強くお勧めいたします。

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